自分・・・
ラーメンに目がない。
それはもう“ラーメン”が“ラーン”になってしまうくらいに“メ”がない。
それくらいラーンに目がないし、目頭が熱くなるし、江頭2:50の父親の名前は江頭2:45だ。
さて、
そんなラーンの話。
出張が多いおかげで日本全国のラーンを食べ歩いている。
北海道の味噌ラーン、名古屋の台湾ラーン、広島県の尾道ラーン、福岡の豚骨ラーンといった具合に北から南まで。
つい先日も福岡でラーンのひとり食べ歩きツアーをこっそりと開催していた。
その日は珍しく夜に客と飲みに行く予定がなかったので、思う存分ラーンを食べるつもりでいた。
空港の本屋でラーンの特集を読み漁り、めぼしい店を四軒程ピックアップし、仕事を終えると同時に一軒目に向かった。
一軒目・・・もつ鍋ラーン。
ラーンの上に乗るニラと牛もつがうまい。けれどスープがもつ鍋用の甘口醤油味のせいでラーンに対しては少し負けている様子。世の中はいつだって勝ち負けの勝負がつきまとう。恐らくチャンポン麺なら良い勝負になるんだろう。そう思いながら少々麺を残して会計をした。
残った麺を見た店員が少々戸惑っていたのはそれだけ完食させる自信があったということだろうか、そうだとしても申し訳ない。こちらとしてはあと三軒のノルマがある。ここでお腹を満たすわけにはいかない。
二軒目・・・一風堂。
うまい・・・けれど少々味がまとまり過ぎている。
「まとまっている」程度であればいい。けれどまとまり過ぎているのはよろしくない。自分が求めているのは澄ました顔したサラブレッドじゃなく、破天荒なじゃじゃ馬だ。飼い慣らされた馬には魅力を感じない。申し訳ないけれど麺を残した。
店員から注がれる「ちょ、ちょっと・・・お客さん」と言いたげな視線は無視して店を出た。というか、そんな目で見ないで欲しい・・・こちらだってつらいんだ。わかっておくれ。
三軒目・・・久留米ラーンの店。
久留米ラーンといえば、博多の豚骨ラーンの起源となるラーン。起源だけに博多ラーンよりも増し増しでギトギトの豚の脂(あぶら)まみれだった。「満足な味だ」・・・の感想とは裏腹に半分程残して店を出た。
ところでここまでにかかった時間、約一時間半。
この一時間半という間にいったい世界では何人の子供たちが飢えてその尊い命を落としていったんだろう・・・。けれどごめん。僕には残さず丸々四杯のラーン全部を食べきることはできないし、残りの麺を君たちに届けることもできない・・・。だからせめて君たちの分まで精一杯味わうよ。
・・・などと思いながら次の店へと移動した。
たぶんだけれど、控えめに言っても自分は最低な人間だ。
四軒目・・・有名博多ラーン屋。
起源となる久留米ラーンほどではないけれど脂でギトギトだった。ギトギトのブタブタだった。
嫌いじゃない。
嫌いじゃないけど食べられない。
もうお腹一杯だ。
むしろもう食べるのがめんどくさいしブタ臭い。
だからビールを飲みながら適当に食べ残してしまった。最低な奴だ・・・。
ところで、ラーン屋四店を回る途中、他にも二軒、餃子専門店に入っていた。
その一軒目の餃子はよかった。
美味しかった。
けれど二軒目餃子がひどかった・・・。
ビールと餃子一人前を頼んでみたけれど、出てきた餃子があまりにまずかったから八個のうちの七個半を残して会計を頼んだ。
すると、さすがに厨房が殺気立った。
店主らしき中年男が睨んでいた。
けれど知らない絡みたくない。
素知らぬ顔で会計をした。
世界を敵にまわした気がしたけれど、正直すっかり酔っていて、そんなことはどうだってよくなっていた。
そう、ひどかったというのは自分の行動のことだ。
そんなラーンにまつわる博多での話。翌日かく汗も豚臭かった・・・。