マスクを買った。
55枚入りの99%花粉カットの優れもの。
これで1ヶ月半は生きていけると思った。
生き延びていけるだろうと思った。
おかげで世界が薔薇色に見えた。
次の朝さっそく付けてみるとやけに小さかった。
箱を見たら“小さめサイズ”と小さめの字で書かれてあった。
そんなのがあるなんて知りもしなかった。
世界は謎に満ちていると思った。
恐る恐る鏡をのぞいてみた。
びっくりするくらいアゴが出ていた。
水着がマスクでアゴが下半身であったとしたら完全に見せちゃいけない部分が派手に出ていた。
そして鼻の頭が亀の頭のように顔を覗かせていた。
思春期の少年さながらだ。
だからマスクは武田久美子の貝殻の水着みたく小さいなと思った。
いやこれちょっと例えが古いなと思った。
そして実際に写真を見てみたら意外と貝は大きかったことを知った。
記憶の中の思い出はいつだって事実よりも素敵なもので、記憶の中の水着の貝は事実よりも極小であるというのは記憶補正というものだろうか。
想像の中の貝はもみじの葉っぱくらいに小さかったのに、実際はウチワくらいに大きかった。少しだけ騙された気持ちになった。
結局マスクは子供用だったということだろう。
けれどそのセクシーさは大人用なのかもしれない。
もしくは武田久美子用だったのかもしれない。
いやもう余計なことは書いちゃいけないなと思った。
だから『私は貝になりたい』と思った。
出来れば武田久美子の水着の貝になりたいと思った。
別に変な意味で書いているわけじゃない。
単にエロい意味で書いているだけだ。
そして単に女性のおっぱいに常に触れていたいと夢見ているだけだ。
結局マスクはほとんど使わなかった。
せっかく買ったのに使う機会がないだなんて・・・
世界が真っ暗に見えた。
そして新しいマスクを買った。
今度はセクシー仕様じゃないものを選んだ。
『ふつう』と書かれていた。
正直もう普通じゃ物足りないなと思った。