麺なしラーメンもう一丁!!!

渋谷辺りの道玄坂辺りを当たり障り無くぶらぶらと歩いていた。

“犬も歩けば棒に当たる”

・・・でお馴染みの犬がこの街のシンボルだけれど、おっさんである自分がぶらぶらと街を歩いてみたら当たったのはラーメン屋だった。

男旭山!!

・・・という名のラーメン屋。

なんて男らしい名前。
The・男!!!男の中の男。
押忍押忍押忍!!くらいにオス。

看板からして何かの汁を出していそうな雰囲気を醸し出している。

頼むからこちらにはかけないで欲しい。

それにしても最近の世の中ラーメン屋が多すぎる。
ラーメン屋ができるたびにいちいち味を確認しなくちゃいけないこちらの身にもなって欲しい。

・・・と書いてみたけれど、いやいや、そもそもそんなに多くのラーメン屋を確認してなんかいない。

けれど最近、汗のにおいが豚臭くなってきたのはやっぱりラーメンを食べ過ぎているせいなんだろうか。

いや、たぶん単なる加齢臭のせいだろう。
けれど豚臭いのはちょっと悲しい。
せめて人間でありたい。

さてと男旭山・・・

入ろうか入るまいかと悩みながら背中を押してくれる何かを得ようと店の前で客を引く外国人店員に尋ねてみた。

「すいません、えっと、ここのラーメンって何味なんですか?」

すると店員・・・

「トンコツトリガラアジショウユ」と魔法のような言葉を唱えてきた。

えーと、豚骨に鳥ガラか・・・。

ふむふむ。
これはこってりなやつが期待できそうだ。

そして味は醤油っと。
いいね。

豚骨醤油に間違いはないっ!と覚悟を決めて店に入った。

席についてすぐ、店員が言っていた「トンコツトリガラアジショウユ」のラーメンを注文した。

待つ間、東京の水道水を冷やしただけであろうお水をちびちびと飲みながら気持ちを落ち着ける。ラーメンを食べるというその未来の行為に向かってもう頭の中では変な汁が出始めている。

「待て待て待て!勝手に幸せに向かってのカウントダウンをするんじゃないよ。蛇口を閉めろ!

何かの超能力で透かして見られたら気持ち悪いくらいに意味のわからないことを頭の中で叫んでいる。

そこへ店員の思いもよらぬ言葉が聞こえてきた。

「お次、ラーメン一丁、麺ナシ!!」

えっ!?
ちょ、ちょっと待て。
麺無しって言ったのか今?

なんだそれ?
意味がわからない。

自分の記憶に間違いがなければラーメンから麺を取ったとしたらそれはもうラーメンなんかじゃない。だからといってラーメンから“メン”を取ったからといってそれが“ラー”かといえばそうでもない。

それはもう単なるスープだ!

というかそもそも“ラー”ってなんだ!?

ふぅ、どうも人間は想定していなかった出来事に突然出くわすと頭がおかしくなるらしい。頭の中でラーという何かを生み出してしまった。

そこへ頼んでいたラーメンがやってきた。ここは一旦“麺ナシ”について考えることは中断しよう。「目の前のエサに集中しろ」頭の中の豚が叫ぶ。「気持ちを切り替えろ!そして食え!」と。

あ・・・はい。

自分の命令に自分で答えながらスープを一口飲む。

ん!
うまい!!

なるほど。

これなら確かに麺無しも納得できる。
スープだけで事足りる。

と頷いているところにまた店員が声を張り上げる。

「ラーメン麺ナーシッ!」

いやいや、どんだけ麺無し売れてんだよ・・・。
そして店員気合い入りすぎ・・。

と思ったところにまたすぐ次の声「ラーメン麺マシもう一丁!」

あ・・・。

この時になって気付いた。
というかリスニングができた。

店員が言っていたのは“麺無し”じゃなく“麺増し”だった。

リスニングの難易度激しく高っ!
にしてもそりゃそうか。
麺がないわけない。

ラーメンの食べ過ぎのせいか、いつの間にか耳すら悪くなっていた。

とはいえ“麺無し”があっても納得できるくらいにスープがうまかった。

だから店を出たとき、呼び込みの店員に「美味しかったです」の言葉をかけてから次に確認のため「ところでこのお店のスープって何でしたっけ?」と聞いてみた。

今度の店員は外国人ではなく別の日本人だ。
すると店員、キレイな標準語で答えてくれた。

「豚骨、鶏ガラ、鯵、しょう油です」と。

え?アジ?鰺?

つまり、外国人店員は味と言っていたのではなく、鰺と言っていたんだということを知り、いよいよ自分の耳に自信が持てなくなった。

そんな隠された鰺の味にあじなことをするな・・・と思いながら、当たりか外れかで言えば完全に当たりだったラーメン屋に当たったことで汁が出まくったという渋谷での話だワン。

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