洗濯屋のおばあちゃんが頭の中でする洗濯と選択

近所のクリーニング屋のおばあちゃんは伝票を書くときに決まって・・・

「えーっと」

と言いながら視線を上に向け、自分の頭の中を探るような仕草をしながら、しわくちゃになった記憶のどこかに隠れてしまったボクの名前を思い出そうとする。

けれど結局思い出せないまま無駄な時間が過ぎるので、最近ではもう早い段階で「あ、ギョウザ(仮)です」と助け船を出してあげている。

そもそも自分そんなに珍しい苗字じゃないのに。

そうしてボクの名前を教えてあげると「ああ、そうそうギョウザ(仮)さんだったわね」と、さも覚えていたか、もしくはもう角を曲がる直前まで記憶が来ていたかのように答えるという一連の流れが、まるで儀式のように毎回決まって行なわれる。

ところが少しまえのこと、おばあちゃんはいつものように「えーっと」と言ったあと・・・

「ギョウザ(仮)さんだったわね」

と突然、頭の中の古びたコンピューターが驚くような早さで正解を導き出したから、僕はおばあちゃんにとびきりの花丸を心の中で書いてあげた。「はい!そうです!」と感動と共に答えながら。

そうして今日。

久しぶりにクリーニング屋に行くと、いつものようにおばあちゃんが「えーっと」と上を向きながら考え始めたから、「また、あの感動を味わいたいから今日は少し長めに待ってあげよう」とワクワクしていると・・・

「シューマイ(仮)さんでしたわね」

と短めの時間で全然違う名前を導き出したから、静かに花丸を取り消し、バツをつけてあげた。

きっとおばあちゃんは頭の中の記憶も洗濯しているんだなと思った。

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