先週、富山県、石川県と営業をこなしながら移動し、辿り着いた夜の福井県敦賀(つるが)市で本場敦賀ラーメンを味わったのでその報告を。
ホテルでのチェックイン後、敦賀駅から延びる商店街に敦賀ラーメンの屋台街があるというから早速向かった。
辿りついた屋台街・・・
想像していたのとは違って屋台が二軒しかなかった屋台街。
「やだ意外・・・」とつい女性言葉で屋台街に絡めた韻を踏んでしまう。
見てみるとそのうちの一軒には全く客がいない。
店主はスマホに夢中で顔を上げやしない。
どうやら彼にはやる気がない。
そうなるともうどちらに行こうかなんて迷う必要はない。
簡単な問題を解くようにもうひとつの店に入った。
席につくと即座にビールを注文した。
夕飯にアルコールは欠かせない。
すると店主・・・
「うち、アルコールおいてないんで」
と、やけにぶっきらぼうな言葉。
あれ?こっちも外れか?
仕方がない。
気を取り直してラーメンを注文した。
ふぅ・・・
と一息ついて、しばし待つも水が出てくる様子がない。
店内を見渡すと「お水はセルフサービスでお願いします」とある。
ああ、なるほど。
そのタイプね。
はいはい。
了解。
それにしても、恐らく普段からほとんど客が入っていない屋台に無駄に店員が二人いて、それなのにビールも置かず、水も出さず、愛想さえふりまかず・・・いったいどうやって採算取っているんだ?
と疑問を抱くほどにもう二度と来たくなくなるような雰囲気。
けれど今さら店を変えるのも面倒くさい。
というか、変えた先の店は先ほどのあちらの店しかない。
サウナから出たらまたサウナ、みたいな地獄は味わいたくない。
やれやれ・・・と肝心のラーメンを食べる前からかなりのマイナス評価。
そしてそのラーメンがやってきた。
マズければ一口食べて店を出ようと思いながら、まずはスープの味を確かめることにした。
はっきりとそれとわかるとんこつスープをレンゲでひとすくいし、ゆっくりと口に運ぶ。
ズズッ・・・
とすすって「えっ・・・・?」となった。
ん?ちょ・・・なんだこれ。
わわっ、うわっ。
めちゃくちゃうまい!!
とんこつベースの濃厚なスープ。
敦賀は昆布の生産量日本第二位。
ということはそれを使った出汁というか?
そうであろうとなかろうと味の深みが半端ない。
海に生息する昆布が野山に生息する豚と合わさり、否定し合うこともなく、むしろ豚の臭みを昆布の優しさが包み込んでまろやかにしている。
と頭の中の“麺ピューター”が・・・いわゆるラーメンコンピューターが解析を始める。
そのせいなのか、さっきから頭に浮かんでいるのは、昆布をマフラーのように巻いた豚が陽気なダンスを踊っている姿で、その豚がなにかを言っている様子。
声は聞こえないけれど・・・その口の動きは・・・え?「どうだうまいだろ?」と・・・言って・・・いる?
クゥーー!!
くそっ。
悔しいけどうまい・・・。
そしてチャーシューを食べる。
ぶたーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
素材の動物名をダイレクトに叫びたくなるくらいにうまい。
ぶたぶた、くぅーーーー!!
適度な厚み、適度な脂身、そして適度なスープの吸いこみ具合の適度な豚。何枚だっていけそうな気がする。
そして麺だ。
オーソドックスな、つまりは一般的な昔ながらの見た目だけれど、その味たるやいったいどうなんだ?細くもなければ太くもない。縮れ具合も適度な様子。
これをこの究極のスープに絡めて食べたらいったいどうなるんだ?
否が応でも期待で胸が膨らむ。サイズで言えばFカップくらいに膨らんでいる。せっかくだからその場に居合わせた他の客に揉ませてあげたい。けれど幸い誰もいない。
そんなことを考えながらようやくひとくち目の麺を口に入れた。
んは。
ふぐっ。
ふはっんは。
んぐ。
ぷはぁ~。
ふぅ。
マズ・・・。
え?なにこれ?マズ。
全然スープと合っていない。マズ。
マズ・・・麺激マズ・・・。
バカじゃなかろうか。
一体何をしでかしているんだろう。
スープが台無しだ。
あーあ、とため息をつきながら心底がっかりしている自分がいた。
せっかくの究極とも言えるスープがまったく活かされていない。ポテンシャルを活かしきっていない典型だ。めちゃくちゃ可愛いフリフリのフリルの付いたアイドル向けの出来の良い服を、脂ぎったおっさんに着せるような無意味さを感じた。
って全然ピンと来ない例えで説明してみた。
それくらいにショックが大きかった。
ショックが大きすぎて半分残して店を出た。
そして外はいつのまにやら雨だった。
まるでこちらの気持ちを代わりに表してくれるかのようにシトシトと悲しげに降っていた。
そんな究極のラーメンを探す旅(え?そうだったっけ?)は始まったばかりだ・・・。