悪魔の接客マニュアル

コロナもいつの間にやら『5類感染症』とやらになっていて、ようやく終わった感を出してきた。

遅いな。
まぁいいけど。

海外にちょこちょこと出かける立場にある自分はすっかりマスクをしないことに慣れているから、「もう着けなくてもいいですよぅ」と肩書だけでもお偉い様方が公にお達しを出したときからほぼ着けていない。

けれど街に出てみれば、特に電車内など未だに通勤に向かう社畜達の大半がマスクをしているから、「あぁ、ご苦労さまでございます」とついつい両手を合わせて拝みたくなってしまう「ご愁傷さまです」と。

まぁ、ウソだけど。

着けたい人は着ければいいだけの話。
どうせ自分だって花粉の季節になれば誰よりも早く長く深く着けるんだし。

いずれにしてもようやく人々は太陽の下に出始め、街の様子も変わり始めたのを感じる。
飲食店のアクリル板達は透明のままその姿を消し、アルコール消毒液も戦う相手を失った兵士のように徐々に撤収を始めている。

コロナの賞味期限が切れたのだろう。
もうこの感染症で儲けようという人々にとってのウハウハな時期は終わった。

そんな中で先日、「ああ、そういえばこんなのあったな」というサービスをとあるお店で受けた。

それが・・・

店員がお釣りを渡すときに片方の手でお釣りを渡し、もう片方の手でこちらの手の裏をそっと触れるというあれ、『必殺ちょっとおさわり』。男が女にやったらセクハラで訴えられかねない危ない技だ。

あれって世に多くいるイカれたマナー講師達が推奨でもしているんだろうか?
完全に世界の流れに逆行している気がするけど問題ないんだろうか?

まぁ、いい。

コロナ禍においてはすっかりその姿を消していたのに、ついに始まった。

正直、あれを若くて可愛らしい女子店員にされるとドキドキしてしまう。そして「またこのお店に来よう」と決意を新たにしてしまう。

あれのせいでいったい何度店員に恋をしてしまったことか。
そして無駄に同じ店に通ってしまったことか。
そして儚い終わりを迎えたことか。

『悪魔の接客マニュアル』だ。

なんて罪深いボディータッチだろう。
ちきしょう。

そうしてまた昨日もランチを食べにお店に行くと同じような状況になり・・・

お釣りを渡される時「また来てくださいねー」という愛想のいい言葉と共に想像以上のぬくもりと力強さでガシッと手の裏を掴まれ「あぁ」と声とも吐息ともわからないものが口からこぼれ出てしまったけれど、その相手が随分と年の行ったおばちゃんだったから1mmすらも心が動くことはなかった・・・。

ボディータッチにも賞味期限があるらしい。

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