駅から家への帰り道。
ほんの少し前に追い越したデブ男とスレンダー美女の関係が胸焦がすほど気になったけれど、たぶん二人は単なる仕事の付き合いでしかない。
というのも、すれ違いざまにこんな二人の会話が聞こえたからだ。
「その格好で寒くないですか?」
とTシャツ姿を指摘するスレンダー美女。
「ダイジョウブダイジョウブ」
と自分に関心を持ってもらえたことが嬉しそうなデブ男。
だから続けて・・・
「ミートテック着てるから(ブヒ)」
とたぶんこれまで何度も言ってきたであろう彼渾身のギャグをじっくりと丁寧に「笑いを取る!」と勝負を賭けた碁盤の上で「王手」の位置に置きにいったけれど、美女は笑うどころか頬の筋肉を動かすことすらせず「へー」とひとことだけ返した。
将棋だと思っていたゲームが実はオセロだった、というような見事な返しっぷりにこちらの目が白黒した。
そう返すならなぜに質問した?
たぶん誰も悪くない。
ただ運悪く彼が太っていただけだし、
ほんのちょっと見た目が受け入れられなかっただけだ。
ほんのちょっと見た目が受け入れられなかっただけだ。
さ、明日からも頑張ろ。