そろそろ洗濯しなくちゃいけないなと・・・
そう思って台所の床に敷いたマットを取り外すという選択をしてみると、床には滑り止めの粘着剤がネッチャリと着いていた。
「ああ、こんなことなら思いっきり滑ってもいいのに」
と受験生の前では絶対言っちゃいけないようなことを思いながら軽く絶望したのが一昨日のこと。
そうして昨日、インターネットで“床についた粘着剤を取る方法”と検索してみると、どこかの賢者が「消しゴムでコスる」という原始的なアドバイスをしてくれていたので急いで百円ショップへと走った。
そうして探していた消しゴムを、百円均一の店で百十円で購入し家へと帰った。
さてと、お前はいったいどれだけの能力を見せてくれるんだい?
と高いところから消しゴムを見下して見たものの、それを使うのは自分しかいないものだから、とりあえず右手でつかみ、夜にそっと行なう孤独な性的な営みであるところの“自分磨き”のように床を激しく前後にコスリあげてみると確かに取れる!
と嬉しくなったけれど、いやいや、これ、かなり手間がかかるぞ・・・と箸を持つのも困難になるほど右手が重くなった辺りで空腹を感じて「これ一体どうやってごはん食べたらいいんだ・・・」と再度絶望した。
そうして絶望しながら昔からの友人に「床についた粘着剤を取る方法を教えておくれ」とメッセージを送ると「アルコール消毒液で溶けるなり」と言われたからすぐにアルコールを床にぶちまけた。
そうして拭いてみると・・・・たしかに取れる!!!
取れた、取れたよ、ありがとう心の友よ!とジャイアン風の感謝を述べてみたものの、先ほどの消しゴムのダメージが腕に蓄積されている。これ以上コスるのは危険だと残りは翌日することにした。
そうして今日・・・
在宅勤務をしながら再び「床についた粘着剤を取る方法」と調べてみると、どこかの主婦が「サラダ油で取れる」と誇らしげに断言している。
おおっ!真の正解はこれか?と、すぐに台所の棚を確認すると、サラダ油はどこにもなく、キャノーラ油だけがたたずんでいたから三度目の絶望を味わった。
けれど調べてみると「キャノーラ油はサラダ油です!」とYahoo!が断固とした態度で知恵を授けてくれたから、ちょっとした罪悪感を感じながら静かに床に油を垂らし、何度目かのコスりを入れてみた。
ああ、取れる、取れるよ・・・。
す、すごいよこれ・・・。
とエクスタシーを感じながら拭いた床は油のテカリのおかげでテカテカと輝いていて、思わぬ副産物も頂けた気分になった。
それにしてもサラダ油、揚げる焼く炒める、くらいにしか使えないと思っていたのに、垂らすだとかコスるだとかコスられるだとか、そんな違う使い道もあるんだと教えられた。
そして今、「自分の中にも新たな可能性があるかもしれない!!」と洗濯を終えた衣類のような真っ白な気持ちになっている。