神々の食事

ある日の展示会でのこと。

その展示会はとても人気らしく訪問客がすこぶる多かった。
昼食のために会場の外に出て選んだ近くの寿司屋は満員の満席で順番待ち状態だった。

「こちらに名前を書いてお待ちください」

と言われたから順番待ちの表に名前を書こうとすると先輩が・・・

「いや待て待て。そこ『かみ』って書いて」と遮ってきた。

え?
どういうこと?

と表情でハテナマークを表すと・・・

「ほら、そう書いておくとさ。呼ばれるときに『かみ様』って呼ばれるからさ(くすっ)」とイタズラっぽく笑う。

あ、はぁ・・・

随分と昔に流行った人騒がせで人迷惑でつまらないタイプのイタズラだ。
まだそんなくだらないことをやる人がいたとは・・・。
それも社会人にまでなって。
そもそもおっさんで。

そうは思いつつも縦社会に生きる社畜の自分。
ご指示通りに『かみ』と書いた。

そうしてしばらく待つと呼び出しがあった。

「神様~!神様でお待ちの2名様いらっしゃいますか~?」

来た来た。
ふむ、なるほど。

音声で聞くとなかなかにインパクトがある。
地上に降り立った2人の神、いや2神、もしくは2柱か・・・

今、地上で人に混じりて寿司を喰らう。

キリスト教やイスラム教など、多くの宗教において神様は唯一の存在だから数えることはありませんが、日本の神様を数えるときは、「1人、2人、3人」ではなく、「一柱(はしら)、二柱、三柱」と数えます。

↑だそうだ。

そうして店内を進んで行くと・・・

「いらっしゃいませー!」
「こちらへどうぞー!」
「ようこそー!」

と店員達が次々に迎えてくれる。

そんな下々(しもじも)の様子もやけにうやうやしいものに思えてくる。

けれど・・・

「ふむ、悪くない」

と一言発したご満悦状態の先輩を見たとき、
いやこれは何か違うなと思ったのと同時に、
こんな人の下では働きたくないなと思った。

けれど働いている。
まぁ仕方ない。

ところで、食事を初めてしばらくしたときに呼ばれていた・・・

「王様二名様~!」

というのは外国から来た方の名前だったんだろうか、それとも・・・。

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