人間無駄に何十年も生きていると自分だけのルールが出来てくる。
先日、バスに乗っていると、飲み屋で一度会っただけでそれほど親しくもない知人が通路を挟んで座っていた。
ここで自分の中のルールが発動した。
■ルールその1:それほど親しくも無い知人は気付かなかったことにして無視をする
そんなわけで顔を隠すように下を向きスマホをいじっていた。
ところが・・・
「よぉ!」とこちらを呼ぶ声。
うっ、気付かれた・・・。
それにしてもやけに馴れ馴れしい呼び方だ。
まぁ、いい・・・
■ルールその2:状況変化にはすばやく対応する
「え?・・・あっ、あぁっ!どうもひさしぶりですねぇ~!」と、さもその時気づいたかのような芝居をしてみる。ちなみにそういう芝居、結構得意だ。
とはいえ、やっぱりめんどくさい。共通の話題なんてまったく無いし。距離感がつかめないからなんとなく敬語だし。
ってゆーかこいつ何歳なんだ?
年下だったら結構腹が立つし、たぶん実際年下だろう。
なんてことを思いながら無駄に苦痛しか残らない時間を過ごした。
それにしても翌日は朝から大阪出張、さっさと家に帰りたいと思っていたところなのに・・・まったく。
そうそう、大阪。
大阪に行くときのルールというのも当然いくつかある。
例えば・・・
■ルールその3:エスカレーターは右側に立つ
うんうん当然だ。
当然だし初歩的すぎる。
東京なら左側に立ち、右側を追い越す人のために空けておくけれど大阪は逆なんだから。
そもそも日本にあって日本じゃない場所、不思議の国『大阪』だ。なんだったら車だって右側通行でもいいと思っている。
そして・・・
■ルールその4:関西人と話していてもムリな関西弁を話さない
これもついやってしまうから要注意だ。
世の中で最も恥ずべき行為のひとつだと思っている。
そしてこれが一番大切なことだけれど・・・
■ルールその5:笑いをとる!
なにしろ大阪だから。
けれど・・・いけるか俺?
ムリじゃないか俺?
まぁいい。
明後日曇りだ。
いやいや当たって砕けろだ。
って、ああ、やっぱりできない気がする・・・。
そうしてその日、大阪でコテコテの関西人の友人達と飲んだ。けれどなぜだか・・・もしくは当然の結果として、初めからまったくペースがつかめなくて焦っていた。俺、場の空気が読めていない。
「どうする?どうすればいい?」
と焦れば焦るほど墓穴を掘っていく。
これがいわゆる笑いの道頓堀ってやつか?
いやいや、何言ってんだ俺、そんな言葉ない・・・。
と心の中だけでボケとツッコミを繰り返しながらルールその5はあっさりと失敗していた。つまり、笑いを取ることに失敗していた。いやそもそも、笑いなんて簡単に取れるものじゃない。うぬぼれるんじゃないよ。
ついでに友人達の関西トークを聞いてるうちについついつられてエセ関西弁が口から出てしまっていたからルールその4も消滅・・・。
あかんやん。
大阪やばいやん。
ってゆーか自分まだまだやん。
友人達の顔が「こいつおもろないわ」ゆうてはる・・・。
そうして、飲み会という名の笑いの勝負の中で一点もゴールを決められずに惨敗した後、地下鉄のエスカレーターに乗っていたら涙がこぼれそうになって上を見あげた瞬間、後ろから声が・・・
「すんません、通してもらってええですか?」って、ルールその3壊滅。俺、東京気分で左側に立っていた。
なにしてんねん自分・・・。
そうして新しいルールを作ることになった。
■ルールその6:ルールなんて作らない